衆院選や参議院選挙などの選挙では情勢で出てくる用語がどのような意味なのかが気になるかもしれせん。選挙に関する言葉は特殊なものもありますから、どのような意味があるのかを正確に把握しておきたいですよね。選挙の情勢調査で書かれている言葉の意味を理解するには、パーセントポイント(ppt)とパーセントの違いや計算のやり方を押さえられているかが重要です。今回は、参院選や衆議院選挙の情勢などで出てくる用語(やや優勢・やや先行・横一線・激しく競り合うなど)がどのような意味なのかを、背景として用いられているパーセントポイントとはどのようなものかも含めてご紹介します。
選挙の情勢に関する用語でまず押さえておきたいのが、「ポイント差」です。パーセンテージポイント、パーセントポイント、あるいは略して単にポイントと表現されることもあるかもしれません。選挙でのポイントとは、割合を表す数値の差を表す単位として利用されます。ポイントの表記はptと書かれることが一般的には多いですが、パーセントポイントの表記は[%pt]・[ppt] ・[p.p.]・[pp]などです。パーセントポイントがいつから使われているかは明確ではありませんが、選挙で使用されるようになったのは平成初期頃だと言われています。
パーセントとポイントの使い分けがよく分からないかもしれません。パーセントとポイントの違いとしては、パーセントは統計においてあるものの全体に占める割合を指すのに対し、ポイント(パーセントポイント)は割合の差を指す点です。パーセントの計算ではある要素の数が全体に対してどのくらい占めているのかを割り算で計算しますが、パーセントポイントの計算は差を求めるため引き算で表します。パーセントとポイントの使い分けで迷った時には、割り算で使っているのか引き算で使っているのかを判断材料の1つにするとわかりやすいでしょう。
パーセントポイントとは、パーセントで表記された数値の差を表現する単位だと先ほどご紹介しました。割合(%)の上昇下向を「ポイント」で表すのはなぜ?と気になった方もいらっしゃるかもしれません。パーセントではなくポイントを計算で使う理由を具体的な数値でみていきましょう。例えば、A.B.Cの選択肢から1つ選ぶアンケートで、Aを選んだ人が45%・Bを選んだ人が30%だったとします。この時のパーセントポイントの計算は45-30=15%ptです。では、Aを選んだ人がBを選んだ人の15%多いかというとそうではありません。Bの15%多い数値は30×(1+0.15)=34.5(%)です。正しくは、30×(1+0.5)=45(%)で、「Aを選んだ人の割合はBより15ポイント多い(1.5倍だ)」と表記します。このように、パーセント同士の比較をする時には、実際のパーセントに当てはめて計算すると違う数値になってしまうため、誤解を防ぐ意味で敢えて異なるパーセントポイントという表記が使われているのです。
ここまでご紹介したポイント差を使って、選挙での情勢調査での表現がどのような意味なのかを順番に見ていきましょう。まず、「やや優勢」は日常生活でも出てくる言葉ですが選挙用語として使われる場合、候補者同士のポイント差が5%pt以上10%pt未満の間であることを意味します(報道機関によって若干の違いあり)。たとえば、情勢調査の結果、以下のように◎◎候補の得票率が41%・△△候補の得票率が34%・××候補の得票率が25%だったとしましょう。◎◎候補と△△候補の差は41-34=7%ptです。そこで、「◎◎候補がやや優勢」と報道されます。
具体的なポイント差がわかっているにもかかわらず詳細に報道しないのは、公職選挙法に人気投票の公表の禁止という記載があるためです。人気投票そのものを禁止すると学校などでの多数決などもできなくなってしまうため、公表はしないという方針であると考えられます。一方で、公職選挙法で情勢報道を禁止すると、公職選挙法148条にあるような報道や評論の自由が認められなくなることから、調査や取材を加味して「その時点での」情勢を抽象的に報道するスタンスということなのでしょう。
やや優勢と同じように、5パーセントポイント以上10パーセントポイント未満の差がついていることを表す表現は、一歩リード・やや先行・やや有利・抜け出す(選挙中盤以降)・逃げ切りを狙う(選挙終盤)などがあります。この差がどの程度なのか、ここでは2021年の衆議院選挙の数値を例に考えてみましょう。全国の有効得票数は57457031票で小選挙区は289あるため、1選挙区の得票総数の平均は198813.25票です。これが一騎討ち(候補者が2人のみ)でやや優勢と出ている場合には、得票の差が9940.662〜19881.325票つまり1万票台である想定だと考えられます(得票数ベースでは優勢側が104377〜109347・劣勢側が89466〜94436票)。「やや」と言う割には差が付いているように感じるかもしれません。平均でも20万票近く総得票がある推算のため、少しの%でも数値ベースでは大きくなるのです。
さて、情勢調査を基にした報道では、これよりも差が付いている状態になるとまた呼び方が変わります。10%pt以上20%pt未満の差で、多いのは、先ほどの表現の「やや」が取れたものです。優勢・先行・有利などと出ていれば、より差が付いていると捉えると良いでしょう。数値ベースで考えると、衆院選の得票総数の平均198813.25票では、19881.325〜39762.65票の差が見込まれることを意味します。また、2019年の参議院選挙での全国の有効得票数は50363771で、1選挙区の得票総数の平均は680591を基準にすると、得票の差は68059〜13611830票ほどです。選挙における「先行」の意味で利用される言葉としては他に、優位・堅調・手堅い・引き離す(選挙中盤以降)などがあります。この程度まで差が付いている場合、出口調査で大きな乖離がない限りは投票日20:00の締め切られた瞬間に当選確実が出る対象となりやすいでしょう。
さらに、20パーセントポイント以上というかなりのポイント差がついている場合には、幅広く浸透・寄せ付けず・安定した戦い・盤石・独走などの表現が用いられます。衆議院選挙の小選挙区の得票数の平均から算出すると39762.65票〜つまり4万票以上離れている目算です。参院選の方は、13611830票〜つまり10万票以上離す圧勝の場合にはこのような表現がなされていると考えて良いでしょう。
選挙で激しく追うという言葉を聞くと、何となく勢いがあるように感じるかもしれません。しかし、実際には劣勢で当選圏内の候補者から遅れを取っていることを意味します。5%pt以上10%pt未満(得票数では9940.662〜19881.325票ほど)付けられており、一歩リード・やや先行・やや有利・抜け出すといった状態の逆側です。似たような意味としては、猛追などが挙げられます。
また、先行や優位の逆で10パーセントポイント以上20パーセントポイント未満の差を付けられている場合には「追う・懸命に追う」と表記されることが多いです。さらに20%pt以上の差であると伸び悩む・苦しい戦い・今一歩・独自の戦い、あるいはそもそも名前が書かれていないこともあります。
選挙の用語ではカタカナのものも多く登場します。ここでは特に、情勢を判断する際に知っておきたいカタカナ語を見ていきましょう。
1つ目は、リードです。選挙でリードという用語が出てきた時には、修飾語に何が付いているかでその優勢度が変わる点に注目しましょう。「大きくリード」の場合には、独走や盤石と同じ20%pt以上の大差を付けていると考えられます。「頭一つリード」は差が明らかの意味なので優勢や堅調と同程度の10%pt~20%pt、「ややリード」は他の「やや優勢」や「やや先行」と同程度です。「僅差でリード」は差はついているものの、ややリードよりは差がないことを強調しているため、ポイント差が5%pt未満のゾーンながらその数字の大きい方だと思っておくと良いでしょう。
2つ目は、デッドヒートです。スポーツのレースなどでも使われますが、選挙では接戦になっていることを意味します。それでは、ここからは、選挙の情勢で最も展開が読めない接戦を意味する用語にどのようなものがあるのかを見ていきましょう。
選挙において接戦の意味で使われる類義語もみていきます。接戦と言われる時は候補者同士のポイント差が1%pt以上5%pt未満の間であることが多いです。接戦の意味で使われる言葉としては、横一線・並走・デッドヒート・拮抗・しのぎを削る・(激しく)競り合う・互角の戦い、などをよく見かけるかもしれません。
多くの場合は候補者の名前が並んで表示されますが、その中でも上回っている候補者の順番に記載されています。横一線や互角と言いながらも得票数の差で言えば、衆議院選挙が1988.1325〜9940.662票・参議院選挙が6805.91〜34029.5票になります。定数が少ない参院選はそれでもある程度の差になりますが、衆院選の方はほとんど読めない票差だと言えるでしょう。
激戦区の言い換えとして、熱戦が繰り広げられる・激闘が繰り広げられると書かれている場合もあるかもしれません。ポイント差がそれよりも小さい1%pt未満のような場合には、大接戦・まったくの互角・全くの横一線と強調されることもあります。
今回は、国政選挙などの情勢で出てくる用語(やや優勢・やや先行・横一線・激しく競り合うなど)がどのような意味かを、背景として用いられるパーセントポイントとはどのようなものかも含めてご紹介しました。情勢調査などでよく出てくるポイントについては、パーセントとの違いとして、パーセント同士の比較のための単位だと押さえておきましょう。様々な表現で記載されますが、ある程度はどのくらいの差なのかを判断することが可能です。戦略的な投票も検討しながら、どのような投票行動をするのかを決める材料にすると良いでしょう。最後までお読みいただきありがとうございました。