◎選挙で得票数が小数点、一票差より小さい数字で決まることも?
選挙で得票数が小数点の場合があるのをご存じでしょうか。1人1票であることから整数ではないのは信じられないかもしれません。しかし、小数点が付くことで、場合によっては選挙の結果が一票差より小さい数字で決まる場合もあります。選挙で1票差より小さい差で当選と落選が決まる原因は、案分票の存在です。今回は、選挙に初めて行く際に知っておきたい、按分とは何か・計算方法として簡単なやり方を例を挙げながらご紹介します。それに先駆けて、そもそも案分とはどのような意味なのかを見ていきましょう。
◎按分するとは?案分と意味に違いはある?
案分の意味は、ある数値を基準にした比率に応じてものを割り振ることです。按分と案分に違いはなく、「按分」は公用文における漢字使用等について常用漢字ではない点から、代わりに「案分」あるいはふりがなを付ける形で用いられることもあります。そのため、案分と按分のどっちを使っても問題ないでしょう。予算や経費などを分配する際にも用いられることから、代金や費用など金銭を扱う作業の中で目にしたことがあるかもしれません。
◎案分比率とは、按分表のエクセルを例にご紹介
「按分」の用いられた言葉に「案文比率」「按分率」があります。按分率は構成比率とも呼ばれ、計算は全ての要素のうちどの程度を占めているのかの数値です。たとえば、赤:3個・青:3個・黄:4個の全部で10個のボールがあったとき、案分率は、赤:0.3・青:0.3・黄:0.4になります。按分を計算式で表すと[その要素の数÷全体の数]です。これは、赤:青:黄=3:3:4であることと合計が10から、赤と青が3割[3÷(3+3+4)]・黄が4割[4÷(3+3+4)]を占めていることを意味します。按分とは、各要素の数字を全体で割ることでその割合を計算している点をまずは押さえておきましょう。
◎衆議院選挙などでの按分票の計算方法とは?電卓でも簡単なやり方をご紹介
選挙での案分票の計算方法は、按分での比例計算の方法を利用して行います。按分の計算方法は、各要素の数字が全体に占める割合を求めるとご紹介しましたが、選挙での計算は「全体」の定義が異なるのが特徴です。言葉だけでは分かり辛いでしょうから、例を挙げてみましょう。
小選挙区に、以下の3名が立候補していたとします。このとき、「衆議院太郎」さんと「衆議院次郎」さんは名前まで書けば区別できますが、たとえば「衆議院」という10000票はどちらに入れているかがわかりません。票の按分は、可能性がある候補者を全体として、割合を計算します。つまり、この事例では、どう考えても「衆議院」には当てはまらない「参議院三郎」さんは按分の比率の計算には含まれないのが大きなポイントです。
まず、先ほどの項目でも触れた、按分率の計算を行います。「衆議院」に当てはまる可能性があるのは「衆議院太郎」さんと「衆議院次郎」さんであり、この二人が分配の対象です。元の得票数はそれぞれ45000票と30000票ですから、按分比率はそれぞれ45000÷(45000+30000)=0.6・30000÷(45000+30000)=0.4となります。
次に行うのが、按分の対象となる票と按分率の掛け算です。今回は不明である「衆議院」のみの10000票を分配し、その割合は先ほど求めた0.6:0.4ですから、追加で得られる票はそれぞれ、0.6×10000=6000・0.4×10000=4000となります。したがって、按分後の得票率の合計は、「衆議院太郎」さんが45000+6000=51000票・「衆議院太郎」さんが30000+4000=34000票・「参議院三郎」さんが50000+0=50000票となりました。
まとめると、按分の計算式は、[(元の数値÷按分の対象になる元の全体数)×按分の対象になるものの数]です。按分の計算を電卓でするのであれば、やり方としては、まず全体数を計算して割合を求めて、その後対象となるものの数を掛け合わせる二段階で行うことをおすすめします。言葉にすると難しいですが、按分とは、元の数が占める割合に比例して分け合っている計算方法だと押さえておくと良いでしょう。
◎選挙での案分票の事例、同姓同名はどう按分し比率計算するのか
投票用紙には、立候補者の名前を明確に記載することが求められています。誤字脱字などによって誰なのかが全く判別できない場合は、無効票としてそもそもカウントされないこともありますので注意しておきましょう。案分票になるのは、苗字が同じ候補者が立候補していて投票用紙に苗字しか書かないなど、投票用紙の内容だけでは誰に入れたかを絞り込めても特定できない場合です。これは公職選挙法第68条2により有効票と認められます。
稀に選挙では同姓同名の候補者が出ている事例もあり、その場合は名前まで書いたとしても按分されることがあります。同姓同名は選挙では「現職・新人などの違い」「年齢の違い」「政党の違い」などで区別されますが、単に名前だけ書かれた投票用紙は判別できませんよね。先程の事例であれば、苗字が同じ場合「衆議院太郎」「しゅうぎいん次郎」のように、立候補届け時に片方がひらがなにするなどの工夫が行われます。しかし、それでも「シュウギイン」「SYUGIIN」など全てを棲み分けるのは困難です。
そこで、有効票と認められた票のうち、可能性がある候補者に先ほどの計算方法で按分されます。結果として、1票が0.6票と0.4票などのように分配されて計算が行われるのです。しかし、有権者としてはどちらの候補者でも良いつもりで投票しているわけではありません。ご自身が意図しない分け方をされないためにも、特に同じ姓あるいは名の候補者がいる場合には、落ち着いて正確にフルネーム・政党名など区別できる項目を記入するようにしましょう。
◎まとめ
今回は、按分の意味や案分との違い・按分比率とは何かに加えて、按分を利用した比例計算の方法をご紹介しました。流れは大きく分けて二段階あることを押さえておくとわかりやすく感じるかもしれません。選挙では無効票にはならないものの、ご自身が意図しない分配のされ方になる可能性があるため、特に同じ名前の候補者がいる場合には、注意を払って用紙に記入するようにしましょう。最後までお読みいただきありがとうございました。
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