中学数学では、三角形の内心を求めたり内接円を描いたりする問題を見たことがあるかもしれません。角の二等分線を利用しよく出てきますから、書き方もしっかりと押さえておきたいですよね。今回は、三角形の内心とは何かを、数学でよく出てくる多角形や内接にも触れながら解説し、三角形の内接円の作図方法と証明をご紹介します。
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◎三角形の内心とは?数学での意味を、多角形とは・内接の意味を含めて解説
世間一般では心のうちを意味する言葉として「内心怖かった」などと使いますが、
数学での内心とは、「多角形に内接する円の中心」を表します。多角形とは何か・内接するとは何かをそれぞれみていきましょう。
●多角形とは?正多角形とは何かも含めて
『多角形』とは、3つ以上の直線によって囲まれた領域をつないでできるものです。直線同士の交点を多角形の頂点・領域の周をなす部分を多角形の線分と呼びます。ちなみに、正多角形とは、多角形のうち線分の長さが全て等しいもののことです。適当に描くと長さはほぼバラバラですから、正多角形は特殊な図形だと言えるでしょう。

●内接する・内接円とは?
『内接する』とは、二つの図形の関係性を表します。片方の図形の頂点または辺にある点のうち1つ以上がもう片方の図形の頂点または周または辺と1点で一致し、かつそのほかの点は全てもう片方の図形の内側にある状態です。特に、内側にあるものが円のとき、その図形を内接円と呼びます。言葉だけの説明だと難しいかもしれませんので、図でみていきましょう。

左にあるのは三角形が円に内接している様子です。三つの頂点が円周上と一致し、残りの辺の部分は全て円の内側にありますよね。先ほど、頂点または周または辺と表記しましたが、中央の図形のように、円周上や辺上で接することも考えられます。そのため、頂点全てが必ずしも接している必要はありません。むしろ、接していない点は全て外側または内側のどちらかに固まっていることが重要です。
円同士の場合は少し特殊で、円周上の1点のみ同士が接してかつそれ以外の点では片方の円がもう片方の円よりも内側に位置しています。1点のみなのは、楕円でない場合には形が同じで、2点以上共有するのは完全一致以外は考えられないからです。

◎【数学】三角形の内接円の書き方:コンパスを使った角の二等分線の作図がポイント
三角形の内接円を作図する際には、円の中心を定める必要があります。円の中心は、三角形の内角二等分線の交点で求めることがポイントです。内接円はもちろんのこと、三角形の角の二等分線の作図では、コンパスを用意しておきましょう。ある頂点(今回はDで考えます)を中心にコンパスで円を描き、その頂点を通る三角形のうちの2辺との交点をP.Qとします。

P.Qを中心に同じ大きさの円を描き、その二つの円の交点をRとしましょう。直線DRは∠Dの二等分線であることがわかりますか?PQはDを中心とする円周上にあるためPD=QD・RはP.Qから距離の等しい点としているのでPR=QR・DR共通で△PDRと△QDRは合同なのです。つまり、この方法で点を設定して線を作図すると、自ずと内角二等分線が描けることがわかりました。

同じ流れで、別の頂点から二等分線を引き、交点をIとしましょう。接するように円を描くためには、接点を求める必要があります。Iを中心に円を描き、三角形の1辺との2つの交点をS.Tとしましょう。S.Tを中心に円を描き、その二つの円の交点をUとしてIとUを結べば、垂線になるため交点Vが内接円と三角形の辺の接点だとわかります。Iを中心とし、IVが半径になるように円を描くと、三角形の内接円の作図が完成です。ここでの円の中心Iのことを内心と呼びます。

◎数学での内心が1つに定まる背景:三角形の二等分線が一点で交わることの証明
内心は以上のような作図の経緯もあり、『三角形の内角二等分線の交点』とも定義されていますが、内角二等分線の3本ともが一点で交わるのかを疑問に思うかもしれません。内角二等分線のうち二つが交点を持つとき、残りの一つがその点を通るのかを証明してみましょう。

△DEFにおいて、∠Dの二等分線と∠Eの二等分線の交点をIとします。Iから辺EF.DF.DEへの垂線をそれぞれX.Y.Zと表してみましょう。△DIYと△DIZにおいてIDは共通・∠IDY=∠IDZ(∵IDは∠Dの二等分線)・Iから辺DF.DEへの垂線をそれぞれY.Z としているので、∠DYI=∠DZI=90度です。つまり、△DIYと△DIZは斜辺と他の1つの角が等しい直角三角形のため合同であり(△DIY≡△DIZ)、IY=IZが成り立ちます。

同様に、△EIZと△EIXにおいてIEは共通・∠IEZ=∠IEX(∵IEは∠Eの二等分線)・Iから辺DE.FEへの垂線をそれぞれZ.X としているので、∠EZI=∠EXI=90度です。つまり、△EIZと△EIXは斜辺と他の1つの角が等しい直角三角形のため合同であり(△EIZ≡△EIX)、IZ=IXが成り立ちます。したがって、IX=IY=IZとなり、Iを中心に三角形DEFの3つの辺に接する円が描けることがわかりました。

ここで、FからIに向けて線を引いてみましょう。△FIXと△FIYにおいてIFは共通・ 先ほどの結果からIX=IY・Iから辺FE.FDへの垂線をそれぞれX.Yとしているので、∠FXI=∠FYI=90度です。つまり、△FIXと△FIYは斜辺と他の1つの角が等しい直角三角形のため合同であり(△FIX≡△FIY)、∠IFX=IFYが成立します。これより、三角形の残りの一つの内角二等分線は、他の角の二等分線の交点を通ることがわかりました。

◎円の接線が90°なのは本当なのか?
内心と内接円に関する証明では、円の接線が90度であることを利用して証明しました。そこで、円の接線が90°なのは本当なのかが気になったかもしれません。接する際には90度だと当たり前のように教わるものですが、その理由を考えると意外と奥が深いものです。接する際に90度であることの真理は、次回の記事で詳しくご紹介しています。
◎まとめ
今回は、三角形の内心とは何かと、内接円の作図に関してご紹介しました。数学での内心とは、多角形に内接する円の中心のことです。内接円の作図は、三角形の角の二等分線の交点を求めることを手順に含みますから、特徴も併せて押さえておくのがおすすめです。最後までお読みいただきありがとうございました。
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