ドント式を計算問題や比例代表のニュースで見て、どのように考えたら良いのかが気になるかもしれません。ドント方式をわかりやすく考えられると、練習問題が出てきても落ち着いて臨めますよね。公民の比例代表制の計算で利用されるドント式の問題は中学でも出題されることが多いです。今回は、ドント方式がどのようなものなのかについて、考え方や計算方法を、ドント式の例題などを通してご紹介します。
◎参議院選挙での仕組みにあるドント方式とはどのようなもの?ドント式のメリットとは?
衆議院選挙や参議院選挙の仕組みであるドント方式とは、比例代表の選挙で用いられる、議席の数を決めるための計算方法の一つです。獲得した票数を1.2.3.4…と順番に割り算をし、商(割られた後の数)の大きい順番に議席を分けていきます。世界の数十か国で採用されており、ドント式が日本で導入されたのは比例代表制が始まった1983年の参議院選挙で、衆議院選挙は小選挙区比例代表並立制となった1996年からです。
●ドント式のメリットとは?
ドント式のメリットは、有権者の投票が比較的平等に議席へと反映される点です。衆議院議員選挙の小選挙区・参議院選挙での1人区では1位のみが当選するため、落選者である2位以下の票は国会の議席には反映されません(死票)。場合によっては半数以上の票が落選者に入ることもあり、有権者の意見とは裏腹に結果に偏りがある点を問題視されます。比例代表でのドント式は、投票数に応じて極力公平に割り振るため、ある程度の得票数があれば2位以下の政党でも議席の獲得が可能です。その点で、ドント式は総取り方式と違い、死票が生じにくく、特定の票数あたりの議席数がほぼ平等になるのが利点として挙げられます。
◎ドント方式/ドント式をわかりやすく:エクセルを使ったやり方
ドント式をわかりやすく考えるには、実際に表をかいて数字を埋めておくのがおすすめです。ここではドント式をExcelで計算していますが、紙で書いても問題ありません。
まず、1⃣政党(票を獲得した団体名)を横一列に並べて、2⃣次の行にそれぞれの得票数を順番に記入していきましょう。3⃣次の行には、それぞれを1で割った数字を書き込みます。4⃣その次の行には得票数をそれぞれ2で割った数字、5⃣さらにその次の行は”得票数”をそれぞれ3で割った数字です。既に割った商をさらに別の数字で割らないように注意しましょう(÷2までは間違いではないものの、÷3は6で割ったことになるため)。
何回割るのかは割り振る議席数や得票数の偏りによって変わります。手間をかけたくない場合には、一旦10くらいまで割り算をして、次の作業をしてまだ足りない場合には改めて行っても良いでしょう。ドント式をExcelを使って計算するのであれば、絶対参照を使って数式をコピーするのがおすすめです。割られる数の列側つまり数字の方・割る数の行側つまり英文字の方に$を付けます。(絶対参照がどのようなものなのかはこちら)
商の中で最も大きいものが1番目です。次にそれ以外の商の中から2番目・3番目…と探して順番を付けていきます。割る数字が大きくなる下の行ほど商は小さいので、大小を比較する際には、既に番号を振った数字に色を付けたり斜線で消したりして、最も上にあるもの同士のみを比較すれば早いでしょう。この例では次に、A・B・Cの1で割った商とD・E・Fの2で割った商で比べます。
◎ドント式はどこまで割る?ドント式で同数が出たときはどうする?
●ドント式の計算はどこまで割ると良いのか?割り切れない場合の対処法
ドント方式ではどこまで割ると良いのかが気になるかもしれません。ドント式で割り切れない場合もありますが、なるべく正確な数値で比べるために、切り捨てはせずに少数点を含めた数字で求めます。ただし、ドント式をエクセルや紙で計算する場合には、桁数が多いと見えづらいかもしれません。商の大小を比較するのが目的ですから、小数第2位や第3位までなどと統一すると見やすいでしょう。(桁数を合わせる方法はこちら)
●ドント式で同数の場合はどう決める?
選挙では得票数が多いこともあり、きりの良い数字になることはほぼないです。しかし、ドント式で同数の商が出てくることも否定できません。ドント方式で同数の場合には、「選挙会において選挙長がくじでどちらに議席が入るかを決める」と公職選挙法第95条2項2号で定めています。つまり、場合によってはドント式の最後の1議席がくじ引きで確定することもあるのです。
次の項目では、ドント式の例題を通して、どのように議席を求められるかをみていきましょう。
◎ドント式の計算問題/練習問題[中学]:比例代表の例題
ドント式の問題は中学で、公民の比例代表制の計算として出てくることがあります。また、ドント方式の考え方は中学受験でも目にするかもしれません。比例代表制のドント式の問題は、基本的には計算ですから、練習問題を通してマスターしていきましょう。
●ドント方式の問題
[15議席が与えられている比例区に、6つの政党から立候補しました。得票数はそれぞれ、A党:24436票・B党:32960票・C党:10831票・D党:15179票・E党:54161票・F党:64928票です。各党の獲得議席はそれぞれいくつでしょうか?]
同じ計算方法で進めていきます。1.2.3.4.5…と順番に割り算を繰り返し、先ほどの注意のように、整数ではなくても四捨五入せずにそのままにしておきましょう。
得票数の割り算が終了すれば、議席配分です。「一番大きな数字から順番に選んでいく」のがルールですから、票数が多いところは先にいくつも議席が獲得できます。たとえば、F党は3で割った数字が21642.666…はD党の1で割った数字15179よりも大きいので、D党の1議席目よりもF党の3議席目が優先です。この操作を繰り返し、定数に達したところで終了します。A党:2議席・B党:3議席・C党:0議席・D党:1議席・E党:4議席・F党:5議席となりました。
◎ドント方式とアダムズ方式の違いは?ドント方式についての豆知識
ドント式は、国政選挙の衆議院選挙や参議院選挙で採用されています。衆議院選挙の比例代表では全国を9つのブロックに分けて計算が9種類行われ、参議院選挙では比例区で全国の総得票数で議席配分です。また、ドント式は、総裁選の党員票でも利用されます。全国の党員・党友から集まった得票数に応じて、回ごとに設定されている党員票(2021年であれば全体の半数に当たる382票)に反映されるのが特徴です。
ドント式の例外として、繰り上げ当選の存在を押さえておきましょう。小選挙区での予想以上の当選や惜敗率による重複立候補対象外などで、ドント式での議席数よりも名簿登載者数が少なくなった場合、その政党からは立候補者数までしか議席を獲得できません。余った議席は、さらに割り振りを続けて別の政党に与える繰り上げが行われます。たとえば、F党の候補者が4人しかいなかった場合、5番目は[登載者不足]になるため、次に数字の大きい(16番目の)E党に1議席が配分されるのです。このように、場合によっては本来であれば数字が小さいために落選していた比例代表名簿登載者が繰上当選する事例もあります。
ドント式とサンラグ式の違いがよくわからないかもしれません。サンラグ方式は、ドント式と同じように割り算をしますが、違いとして割る数が奇数のみである点が挙げられます。つまり、割る数が1.3.5.7.9…の順で1つ飛ばしです。割られた後の数である商の減り方が大きいので、ドント式よりも小さな政党が選挙で議席を獲得しやすい仕組みになっています。先ほどの例で試してみると、ドント式では0だったC党が議席を確保できました。
また、ドント方式はアダムズ方式とも比較されることがあるかもしれません。ドント方式が比例代表で得票に応じてどの政党に議席を配分するかを決める計算方法でした。アダムズ方式は、国政選挙の都道府県の議席を人口に応じて比例配分することで、得られた商の小数点以下を切り上げることで議席数を算出する方法です。分配する考え方や選挙で用いられている方法などの点は同じですが、計算方法や用途は随分と違いがあると押さえておくと良いでしょう。
◎まとめ
今回は、比例代表のドント式がどのようなものかについて問題などを通してご紹介しました。比例代表の得票数に応じて議席を配分する仕組みのことであり、実際に票数を割って商を比較するとよりイメージしやすいかもしれません。ドント方式の練習問題で流れを理解しておくと、問題として出てきたときはもちろんのこと、選挙の開票速報で途中でも比例代表の議席が決まるのにも興味が深まるかもしれません。最後までお読みいただきありがとうございました。
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