WBCをはじめ野球の国際大会では、複数チームが同率で並んだ場合に「失点率」で順位が決まることがあります。ニュースやSNSで「失点率」という言葉を見かけても、どのスコアならどのチームが上になるのかが直感的に分からず、少し複雑に感じるかもしれません。特に野球は得点の組み合わせが多いため、条件を頭の中だけで整理するのは難しいですよね。実際には、得点の組み合わせごとに失点率を計算して表にまとめることで、順位の変化を視覚的に理解できます。Excelを使えば、そのシミュレーションもそれほど難しくありません。
今回は、WBC2026の1次ラウンドプールBにおける最終戦、メキシコとイタリアの試合結果によって順位がどう変わるのかを例に、失点率の考え方と順位シミュレーションの方法をご紹介します。
◎WBCの順位決定方法は失点率?グループステージのルール
WBC2026の1次ラウンドは、5チームごとに4つのグループ(プール)に分かれての総当たり戦が行われました。勝ち数が多い方が高い順位になりますが、複数チームの勝敗が同じになった場合、順位を決めるためにいくつかの指標が使われます。その代表的なものが「失点率」です。失点率とは、失点を守備アウト数で割った数値で、値が小さいほど守備が安定していると評価されます。計算式は次の通りです。
失点率=失点÷守備アウト数
ここで重要なのは、単純な失点数で比較するのではなく、アウト数で割って求めているという点です。野球では、先攻と後攻で守備回数が変わることがあります。たとえば後攻のチームがリードして9回裏を迎えた場合、先攻のチームは最後の守備を行わずに試合が終わるため、守備イニングが1回少なくなることは珍しくありません。また、サヨナラ負けになった場合も、イニングの途中で終わるため、分母のアウト数が変わることがあります。こうした事情から、順位争いの場面では「何点差で勝つか」「どちらが先攻か」なども影響してくるのです。
今回のケースでは、アメリカ・メキシコ・イタリアの3チームが同率で並ぶ可能性があるため、最終戦のスコアによって順位が変わる可能性があります。そこで、さまざまな得点パターンを表にまとめ、どの条件でどのチームが上位になるのかを順番に見ていきましょう。
◎メキシコ対イタリアのWBCでのスコア別シミュレーション|失点率で順位が変わる条件
WBC2026の1次ラウンドのプールBは、最終戦のメキシコvsイタリアを残して、アメリカ・メキシコ・イタリアの3チームが次のラウンド進出条件となる2位以内になる可能性がありました。
イタリア:3勝0敗
アメリカ:3勝1敗
メキシコ:2勝1敗
最終戦で、イタリアが勝利すれば、イタリア4勝・アメリカ3勝・メキシコ2勝となり、勝ち星だけで順位が決まります。しかしながら、メキシコが勝利すれば3チームが3勝1敗で並ぶという状況です。WBCのルールでは、プール戦で複数チームが同じ勝ち数で並んだときの順位決定のルールとして、まず当該チーム間での勝敗と規定しています。しかしながら、今回の例では、アメリカ〇5ー3●メキシコ・イタリア〇8ー6●アメリカ・メキシコ〇ー●イタリアとなり、全チーム1勝1敗のため、決まりません。そこで、失点率によってどのような順位決定の条件になるのか、イタリアの得点を縦軸、メキシコの得点を横軸として、さまざまなスコアのパターンを一覧表にまとめました。まずは、メキシコの失点率からみていきましょう。
●WBC2026におけるメキシコの失点率
野球の試合では得点が大きくなることもあるため、シミュレーションでは0点から15点までの範囲を想定しています。また、この試合ではイタリアが先攻、メキシコが後攻という条件が決まっていました。メキシコは勝っても負けても9回(27アウト)守ることは確定です。そのため、9イニングで終了する場合、表は以下の1種類に決まります。

既に確定しているアメリカの失点率と比較しました。
アメリカの失点率=(3+8)/18/3≒0.204
緑:メキシコの失点率<アメリカの失点率
藍:メキシコの失点率>アメリカの失点率
です。イタリアが5得点以下=メキシコが5失点以下の場合はメキシコが、イタリアが6得点以上=メキシコが6失点以下の場合はアメリカが上回ります。
●WBC2026におけるイタリアの失点率
先攻チームは通常9回まで守備を行うのに対し、後攻チームはリードしていれば9回裏の守備を行いません。そのため、守備イニングが異なる可能性があり、同じ失点でも失点率が変わる場合があります。まずは、最も可能性の高い、9回時点で点差がついている場合を見てみましょう。このとき、先攻のイタリアは勝っていれば(表の左下)9回27アウト、負けていれば(表の右上)8回24アウトになります。

メキシコが4得点まで=イタリアが4失点以下であればイタリアがアメリカを上回り、メキシコが5得点以上=イタリアが5失点以上であればアメリカがイタリアを上回ることがわかりました。
次に、9回途中でサヨナラ勝ちが発生する場合です。サヨナラ試合の場合は最大でも4点差ですから、右上の端は起こり得ません。9回1アウトの場合は合計で52アウトになります。

9回2アウトでサヨナラとなった倍は、合計で53アウトです。

このように表にまとめてみると、今回のケースではアウト数によって順位の変動はないことがわかります。複雑に見える条件でも、整理して可視化するとパターン化されているのです。
◎可能性は4パターン、WBCでトーナメントに進むのは?
シミュレーション表を詳しく見ていくと、順位のパターンは無数にあるわけではなく、いくつかのグループに分かれていることが分かります。今回のケースでは、最終的に考えられる順位は4パターンです。
青:1位イタリア 2位アメリカ イタリア勝利
緑:1位メキシコ 2位イタリア メキシコ勝利かつイタリア4失点以下
橙:1位メキシコ 2位アメリカ メキシコ勝利かつイタリア5失点以上かつメキシコ5失点以下
赤:1位アメリカ 2位メキシコ メキシコ勝利かつメキシコ6失点以上

今回であればメキシコの4得点付近とイタリアの5得点の付近のように、境界線に注目しておくと、どのスコア帯で順位が変わるのかが一目で分かります。エクセルなどを使ってまとめてみると、視覚的に理解しやすいのも特徴です。
◎まとめ
今回は、野球の失点率による順位決定と、スコア別シミュレーションの考え方についてWBC2026のプールBを事例にご紹介しました。得点の組み合わせは多く見えますが、表に整理すると順位のパターンは限られていることが分かります。Excelを使えば、こうした条件を視覚的にまとめることもできます。試合の展開をより深く理解するための参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。
